#50 映画の適切な広告戦略と現代のチームマネジメントの在り方
- Update:
- 2025.06.23

山田兼司 映画・ドラマプロデューサー


- Update:
- 2025.06.23
Tyken Inc. CEO 映画・ドラマプロデューサー。慶應義塾大学法学部卒。ドラマ「BORDER」シリーズ、「dele」などを手掛け、東京ドラマアワード優秀賞を2度、ギャラクシー賞を3度受賞。また、仏カンヌでは「dele」でグランプリを受賞。映画「怪物」でカンヌ国際映画祭脚本賞、クィアパルム賞の2冠。「ゴジラ-1.0」では北米の邦画興行収入歴代1位を記録し、史上初のアカデミー賞視覚効果賞を受賞。同年、個人として「怪物」「ゴジラ-1.0」で2つのエランドール賞と藤本賞を受賞。北米では2023年を代表する「アジアゲームチェンジャーアワード」をグラミー賞受賞アーティストのアンダーソン・パークらと共に受賞した。2024年よりPGA(Producers Guild of America)の正式会員に選出。最新の企画・プロデュース作は「ファーストキス 1ST KISS」。

イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。
今回は番組6人目のゲストとして、映画・ドラマプロデューサーの山田兼司さんをお招きして録音された、#50収録の様子をご紹介します。
今回はリスナーさんから頂いた質問からスタート。いつも沢山のメッセージありがとうございます!
「映画のCMって、感動しました、泣けました!とお客さんの感想を伝えるものが一般的ですが、映画以外ではあまり見ません。あれって効果が高いのでしょうか?」という山田さんいわく、クリティカルな質問。
泣きました!これ見たら泣けます!という、受け手によっては馬鹿にされた気持ちになりかねない手法ですが、15秒から30秒程度では作品全体の魅力を伝えきれないからこそ、生まれたやり方なのかもしれません。そもそもコンテンツの世界において、制作と宣伝は全く別の機能であり、その連携や関係性も最終的なアウトプットに関連してきます。
一番怖いのはパターンにハマってしまうこと、と山田さん。新しいことを考えることは、コストがかかり汗をかく必要のある行為ですが、だからこそ人を惹きつける価値を生むのです。
漫画の場合、宣伝チームが編成されるようなことは少なく、担当編集者と宣伝部の担当の二人で進んでいくことが多いという林さんに、じゃあ育て上げた作品が映画化された場合の宣伝はどうですか?と山田さんから厳しい差し込みが!
どうやら山田さんは、我々が知らない林さんの一面を知っている様子。確かに本編で石井プロデューサーも言っていた通り、本職の現場での林さんに関して私たちは知る由もありません。山田さんが言うように今日もどこかで林さんは、製作委員会に乗り込んでいって、「おらあ!」と宣伝プランを撤回させているのかもしれません…恐ろしいですね…。
漫画原作の編集者が、アニメーション映画のコピーや宣伝など細かい部分まで、しっかりとチェックするケースというのは多くないそうで、林さんの作品への愛とメディアミックスに対する、クオリティコントロールの意識の高さが垣間見える一幕となりました。
話題はクリエイティブにおけるマネジメントについてへと移ります。ある種、時間をかければかけただけ、クオリティが上がってしまうコンテンツ作りは、浸透しつつある働き方改革の考え方と完全に逆。その結果、優秀なクリエイターたちは組織から逃れ、個人事業主となることでその枷を外すようになりました。確かに近年、テレビ局や出版社などを独立し、更に幅広く活躍しているクリエイターが目立つように感じます。
一方で、その無限の労働を人に求めることは出来ないというジレンマも。山田さんのご友人の産業医の方が言うには、マネジメント側の人間は一挙手一投足全てがなにかのメッセージを与えている、ということに自覚的でなければいけないと仰っていたそう。求めることはもちろん、寝る以外の時間働いている背中を見せることも、別の意味でプレッシャーを生んでしまいます。
この振る舞いは何もメッセージを発していません!意図ゼロです!という、発言自体も何かメッセージを含んでいるように感じられてしまうかもしれません。もはや行き止まりのように感じてしまうマネジメント受難の時代。土日の朝と夜に少し時間があるから、思いついたことをまとめてチャットをグループに送ってしまう、という話題で異様に盛り上がるスタジオでした。
林さんによるとんでもない急ハンドルにより、話題は映画の宣伝についてに戻ります。宣伝費は興行収入の目標値によって決まり、その目標値は最初に決まっているそう。プロデューサーとしては作品が進行していく中で、より色々な施策ができるよう予算を増やしにかかりますが、そこは営業部や宣伝部との兼ね合いも。
映画は作って半分、宣伝で半分だと思うと山田さん。宣伝プロデューサーは立体的に作品を世の中に送り届けるクリエイターであり、日本ではもっとその重要性を認識すべきだと教えていただきました。
信頼して全てを任せられるプロの前には、常に行列が出来ている…というお話になったところで、今回はお時間に。次回も頂いたメッセージから、世界に向けて売るためのヒント、面白い作品を作り続けるためのシステムの話などお話は広がっていきます。林さんが短編映画の監督に…?
ぜひ番組とこのホームページでお楽しみください。