#68 Netfrixシリーズ『デスキスゲーム』ができるまで

Update:
2025.10.27

佐久間宣行 テレビプロデューサー

Update:
2025.10.27

1975年生まれ。福島県いわき市出身。 テレビ東京のプロデューサーとして「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「ピラメキーノ」「ウレロ☆シリーズ」「キングちゃん」などを制作。2019年4月からラジオ「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」を担当。 2021年3月末にテレビ東京を退社しフリーに。Netflix「トークサバイバー」「罵倒村」「デスキスゲーム」 「LIGHTHOUSE」DMMTV「インシデンツ」YouTube「NobrockTV」「BSノブロック」は総登録者300万人。 著作に「佐久間宣行のずるい仕事術」「ごきげんになる技術」など。レギュラー番組「勝手にテレ東批評」

収録レポート

イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。

 

今回は番組8人目のゲストとして、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんをお招きして録音された、#68収録の様子をご紹介します。

前回から3週間ほど時間を空けて行われた、対談後半の初回となる#68。

まずは、リスナーから寄せられた「よしながふみ先生の作品のどういうところが好きですか?」という質問から。佐久間さんのファン歴は非常に長く、同人誌時代からだと言います。BL作品も通り、商業誌の『こどもの体温』に衝撃を受けたとか。

佐久間さんは、よしなが先生作品の魅力について、人間の残酷さを描く「冷たい目」と、だからこそ際立つ「優しい目」の両方を持ち合わせている点だと語ります。さらに、歴史やSFに対する造詣の深さ、そしてそれに裏打ちされた構成力にも毎回驚かされるとのこと。

多作なよしなが先生ですが、佐久間さんはその作品のすべてを書籍と電子の両方で持っているそうで、特に『フラワー・オブ・ライフ』は高校ものの最高峰だと太鼓判。全4巻と手に取りやすい巻数なので、ぜひ週末のお供にしてみてはいかがでしょうか。

話題は佐久間さんが手がけた、Netflixシリーズ『デスキスゲーム いいキスしないと死んじゃうドラマ』の制作秘話へ。一見するとドラマ仕立てのコメディショーのようでありながら、その実態は芸人たちの即興劇で物語が進行するという、極めて特殊な構造になっています。

まずゲームブックのように、「ここで誰が勝つと、誰が生き残る」といった大まかな分岐点だけが定められた台本を作成。そして、演劇のエチュード(即興劇)の方法で、本来のキャストではない人たちとリハーサルを実施するという流れ。

アドリブが中心となる構成であり、カメラや音声といった技術のリハーサルも一筋縄ではいきません。佐久間さんいわく、「リハーサルまでは演劇で、本番はスポーツ中継」に近いとのこと。何が起こるか予測不能なため、カメラワークも固定せず、演者の動きに瞬時に対応できる体制で撮影に臨んだそうです。

現場では、カメラに見切れて大声が飛んだり、ADさんが血のりを手に走り回ったりと、その緊張感は凄まじいものだったそう。成功に終わったとは思えないほど、帰りのロケバスは全員が疲れ果てて無言だった、というエピソードがその過酷さを物語っていました。

いつ誰が脱落するかは、その場のアドリブの出来次第。つまり、半年という長い時間をかけて準備された脚本も、展開によっては使われないままになる、いわゆる死にシナリオが多数存在するということ。その効率度外視の作り方は、佐久間さんのコンテンツへのこだわりを感じさせます。

なんでこういう企画になったんだろう、という林さんからの問いには、この企画は特殊な育ち方をしたという前置きとともに、劇団ひとりさんの才能と、佐久間さんの持つ映画や演劇の知識とのかけ合わせだったと語ります。佐久間さん流のエチュードのつけ方や現場での仕切りによって、演者が思い切った動きを出来たのも、あの唯一無二な空気感を作り出せた理由と言えそうです。

新人であれば「実現可能なの?」の一言で終わってしまうかもしれない、この常識外れの企画が実現できたのは、佐久間さんがこれまでNetflixで『トークサバイバー!』『LIGHTHOUSE』『罵倒村』と3作品ヒットさせてきた実績と、そこから生まれた信頼関係があったからこそ。『デスキスゲーム』もランキング1位ということで、もしかしたら次回作もあるのかもしれません…!


番組終盤では、「追い込まれて出てくるものが面白い」と佐久間さん。週刊連載の作家さんも、追い込まれたときに出てくるものが面白いという林さんの所感も共有されます。作り込まれたものではなく、極限状態で生まれた人間の反応を見たいという欲求が、佐久間さんの野心的な企画に表れているのかもしれません。

 

芸人がゾーンに入る瞬間を見たい、と佐久間さん。カメラが回っている状態で、自分がアドリブを言わないとこの場はどうにもならない。そんな極限状態で引き出される、芸人さんのこれまでの経験値と瞬間の思いつきは、確かにゾーンに入っていると言っても過言ではないのかもしれません。

 

週刊連載の作家さんも、毎週必ずやってくる締め切りに向かって、物語を構成し、漫画を描き続けるというのはある意味でのアドリブだと林さん。人間の即興性とコンテンツにお話が及んだところで、今回はお時間に。

 

次回もリスナーさんから頂いたメールを紹介しながら、漫画家と芸人の成長における共通点のお話や、世界に向けて日本のバラエティコンテンツを発信する話など、非常に興味深いトピックで盛り上がります。

 

ぜひ番組とこのホームページでお楽しみください。