#13 生みの親が語る、伝説のゲーム『MOTHER』の制作秘話
- Update:
- 2024.09.30
糸井重里 ほぼ日代表
- Update:
- 2024.09.30
ほぼ日代表 糸井重里(いとい・しげさと)。コピーライターとして一世を風靡し、作詞や文筆、ゲーム制作など、幅広く多彩に活躍。1998年にスタートしたウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」では、『ほぼ日手帳』をはじめ『ほぼ日のアースボール』『ほぼ日の學校』など様々なコンテンツの企画、開発を手掛ける。
イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。
引き続きゲストとして、ほぼ日代表 糸井重里さんをお招きした、#13収録の様子を紹介します。
「なんで僕がやるんだろうっていう、想像してない仕事ばっかりしてる」
冒頭から糸井さんらしい、素敵な言葉から始まった第13回。
ジブリのコピーライティングを担当することになった経緯も、元をたどれば新潮文庫の仕事をしていたことがキッカケ。そこから『火垂るの墓』映画化のタイミングへとつながっていきます。
自分は恥ずかしながら、お話を聞くまで知らなかったのですが、『火垂るの墓』と『となりのトトロ』は同時上映だったという話をリスナーの皆様はご存知だったでしょうか? 同時期ということはぼんやり知っていたのですが、「同時上映」というパッケージだとは…。
平成生まれの自分は「どちらが先だったの…?」と思ってしまったのですが、当時は今で言う名画座のようなシステムで、映画館に居る間は自由に観られるシステムが主流。順番は自由で、1本観て帰ることも可能でした。だとしてもこの2本、内容的になかなかパンチのある組み合わせですよね。
この2本のコピーを糸井さんが担当し、当時6歳のお嬢さんを連れて行った糸井さんを見た宮崎駿さんが、「こういうのがお父さんなんだ」と思ったことがキッカケで、『となりのトトロ』のお父さん(草壁タツオ)役の声を担当することになっていくのです。
そして糸井さんが30代の中で、「やっておいて良かったな」と思った仕事が、ゲーム制作。今でもたくさんのファンが愛する『MOTHER』シリーズの世界を作り上げた糸井さん。テレビ出演でゲームに関する発言をしたことがキッカケで任天堂に行き、10枚にも渡る手書きの企画書をあの伝説のゲームクリエイター宮本茂さんに見てもらう機会につながったそう。
このアイデアも「こんなの誰か作ってくれないかな」から始まっているという糸井さん。お話を聞いていて、やりたいことを思いつくセンスもそうですが、やりたいと思ってからの熱意と行動力、周りを巻き込んでいく静かでユーモアに溢れた情熱を節々から感じました。
『MOTHER』の開発チームと過ごした日々は、仕事仲間と友だちがほぼイコールになるほどの密度でした。そんなお話から、話題は「良いチーム」についてに。
組織論やチームビルディングの文脈で語られるようになった「心理的安全性」ですが、糸井さんは昔から意識してきたポイントでした。高圧的だったり、否定から入ったりするコミュニケーションは、人を萎縮させ良いアイデアやアウトプットに繋がらないと言われています。バランス良く振る舞うのが難しいという林さんに対して、糸井さんは「相手に嘘をつかれていないと分かってもらえればいい」と返します。
とはいえ、登る山が見えている仕事の場面では、素だけではどうにもなりません。どこか厳しい視線を素の中に内包している人が、仕事の場面において成果を発揮することも多々あるでしょう。ちなみに糸井さんは、自分のことを優しい人ではないと思うそう。
個人的には、この番組のプロデューサーである石井さんのPodcast番組にて、自身のプロデューサー業をサッカーのディフェンスみたいだと、話していたことと繋がりました。
誰かが危ない部分に気づいて、対応しなければいけない。石井さんも自身を優しい人じゃない、嫌われていると言いますが、その視点が無いと大きなプロジェクトを成功にまで持っていくのは難しいのだと、改めて感じました。
”Love may fail, but courtesy will prevail.” カート・ヴォネガットの『ジェイルバード』という作品に出てくる一節です。糸井さんは今回の対談で、この一節を「愛より親切の方が信じられる」と表現されました。
愛はとても強いもので、時には愛から争いが生まれるようなケースもあります。一方で親切は、人に対して寛容であり相手を尊重するようなイメージでしょうか。
愛する、愛し切るのはとても難しいけど、お互いに親切に向き合うことで穏やかに暮らしていける。シビアな言葉ではありますが、美しい言葉だと思います。
人間の生き方に深く関わってくる「愛」の話にまで至った第13回。この形式の本領発揮というところで、初回の収録はここまで。一ヶ月ほど収録期間が空いて始まる、次回以降の展開も必聴・必見です!
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