#15 「漫画は可能性の塊だと思っている」糸井さんと語るマンガ論

Update:
2024.10.14

糸井重里 ほぼ日代表

Update:
2024.10.14

ほぼ日代表 糸井重里(いとい・しげさと)。コピーライターとして一世を風靡し、作詞や文筆、ゲーム制作など、幅広く多彩に活躍。1998年にスタートしたウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」では、『ほぼ日手帳』をはじめ『ほぼ日のアースボール』『ほぼ日の學校』など様々なコンテンツの企画、開発を手掛ける。

収録レポート

イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。

 

引き続きゲストとして、ほぼ日代表 糸井重里さんをお招きした、#15収録の様子を紹介します。

今回もリスナーさんからのメールでスタート。

「今、糸井さんが好きなエンタメってなんでしょう?」という気になる質問を頂きました。

 

糸井さんの回答は、「1番にあげたいのは漫画だけど、漫画は興味がある程度では済まされない」というものでした。

 

#09でもお話がありましたが、糸井さんは一時期、水木しげるさんの短編のようなものを目指して、漫画を描いていた時期がありました。漫画家以外に、なりたいと思った職業は特に無かったそう。

 

ここから糸井さんの漫画愛が炸裂していきます!

まずアニメは漫画であるという意見。たしかに、広く漫画というエンタメがあり、その中の一つの表現形態がアニメです。そして10,000年以上前から存在するとされる世界遺産、アルタミラ洞窟壁画も最古の漫画じゃないですかと糸井さん。

 

林さんの漫画の定義は、「絵と言葉で物語とキャラクターを描いているもの」。そう考えていくと壁画も漫画というのはあながち間違いではなさそうです。

更に、漫画には日本的要素が深く関わっています。アメコミより早く、日本の漫画が市民権を獲得した理由として、日本語は表音文字と表語文字の両方があるからではないかと林さんは言います。

 

表音文字とは単純に音を表す文字。アルファベット(ラテン文字)やひらがな、カタカナがこれに当たります。

一方、表語文字とはそれ単体で意味と発音両方を示すもの。例えば漢字の「本」は、これ単体で「本」という概念を説明しつつ「ホン」という発音の機能も有しています。

 

ここに「ルビ」という概念が加わることによって、小さいコマや文章で包括できる情報量がドンドン増えていくわけです。改めて漫画を分解して考えてみると、その情報量の多さに驚きます。

また、漫画の凄いところがその属人性。

 

アニメーションや実写ドラマ、映画であれば、数多くのステークホルダーが存在し、多くの人のチェックが入ってから世の中に出ることになります。それが世界的なものであれば、どの世界のどのカルチャーの人を狙ってコンテンツを送り届けるかによって、コンテンツ自体の質や方向性も変わってしまいます。

 

一方漫画は編集者や出版元はあるものの、基本的には1人で作ったものがビッグビジネスになっています。金銭的にも人的リソース的にも、チャレンジがしやすい環境にあると林さん。最近では自分で描いて、電子書籍で出版して、SNSで営業をして…と、完全に個人で活動ができるようになっています。

 

だからこそ、ドラマや映画になる際に、その属人的な美学や言葉をどう表現するのかが問題になっているのかもしれません。

そんな日本独特の表現の話から、話題は最近糸井さんが今更ながらに興味を持ったという俳句に移っていきます。たった17文字の五・七・五の中に季語を入れての表現。太古から日本人の表現として親しまれ、今でも文化として耕されたうえで楽しまれています。

 

毎週日曜朝のNHK俳句を見ながら、ああだこうだ言いつつも、17文字の中での良い悪いを感じるとのこと。更に昔の名人と呼ばれる俳人の名作を見ると、明らかに良いと感じるそう。過去に大量に名作があるにも関わらず、新しい句を作り続ける私たち。新しいものに出会いたいという欲望と、チャレンジし続けるその姿勢が文化として耕される土壌を作ってきたのかも知れません。

 

気付いたら「好きなエンタメは何?」という質問のみでお送りしていった第15回。ですが、改めて漫画というカルチャーを深堀り、俳句の話題にまで展開していきました。

 

次回も、漫画というカルチャーの可能性や糸井さんと前橋BOOK FESの話、そして企業という形式に至るまで熱量高めでお送りしていきます。

 

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