#40 ヒットドラマのプロデューサー・佐野亜裕美が実践するインプット術

Update:
2025.04.14

佐野亜裕美 ドラマプロデューサー

Update:
2025.04.14

佐野亜裕美、ドラマプロデューサー。東京大学教養学部卒業後、2006年TBSテレビに入社。2011年S Pドラマ『20年後の君へ』でプロデューサーデビュー。『ウロボロス』『99.9 刑事専門弁護士』『カルテット』『この世界の片隅に』などをプロデュース。2020年関西テレビに移籍し『大豆田とわ子と三人の元夫』『エルピス〜希望、あるいは災い』、業務委託でNHK『17才の帝国』をプロデュース。2018年エランドール賞プロデューサー賞、2022年大山勝美賞、2023年芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

収録レポート

イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。

 

今回は番組5人目のゲストとして、ドラマプロデューサーの佐野亜裕美さんをお招きして録音された、#40収録の様子をご紹介します。

しばらく時間を空けて再会となった2回目の収録初回。リスナーの皆様からのメールを起点にして、様々な方向に話題が展開していく、とても興味深い回となりました。

 

「どのくらい本や映像作品をインプットしているのか?」という頂いたメールから本編はスタート。現在、佐野さんが関わっている企画は10本前後とのことで、そこに対する資料の読み込みなどで、かなりの時間を要しているそう。

 

好きなものを見る時間が無いとも捉えられますが、一方で自分の好みで選んでいたら、絶対に触れることのなかった本や映像を見る良い機会になると佐野さん。知らないものを知ることが出来るキッカケでもあり、たくさんの企画を横断するプロデューサーの特権と話されていました。

お忙しい佐野さんですが、最低週に1回は映画館に足を運んでいるとのこと。ちょうど収録の前日には、アカデミー賞8部門ノミネート、『西部戦線異状なし』により一躍世界にその名を知らしめたエドワード・ベルガー監督の最新作である『教皇選挙』を観劇したそうで、久しぶりに映画のパンフレット買った!と興奮気味に教えてくれました。

 

『教皇選挙』はいわゆる、映画館で観るべき映画。一時停止せずに最後まで観るべき構成になっており、映像のデザインも素晴らしいとのことで、絶対に見たほうが良いと太鼓判を押す佐野さんでした。佐野さんは、映画館へのこだわりがあり、この作品は映像美がすごいからより大きいスクリーンで、この作品は映像より音響重視で、など事前に情報収集をして作品によって観る映画館も変えているそう。

 

かたや林さんは直感派で、作家さんや周りの人からおすすめされた作品をサッと観に行くことが多いらしく、最近観に行ったのは、監督が統合失調症を発症した姉と彼女を取り巻く家族を20年に渡って記録した映画『どうすればよかったか?』。

 

本編では作品の核心となる部分にも触れながら、衝撃的なテーマや倫理的な問いかけについて深く掘り下げ、いわゆる「くらう映画」について二人が話しています。作り手としてだけでなく、一人の親として、一人の生活者として心を動かされる瞬間を率直な言葉で話されていたのが印象的でした。

30代の頃はとにかく映画、マンガ、ドラマを浴びるように見ていたという佐野さん。しかし現在は「今の時代を知ること」「これからの変化を読むこと」に重きを置いたインプットへと変わってきたと語ります。

 

例えば、Netflixのリミテッド・シリーズ(1シーズンで完結のドラマ)で歴代1位を獲得したことでも話題の『アドレセンス』など、予算がかかったハリウッド超大作!というよりは、制作費を抑えながら様々な工夫や作り手の熱意が伺える作品を勉強として観ているそう。

 

その姿勢は、自分自身の挑戦にも通じるものがあり、佐野さんの場合は「これを頑張ってやりきれば、何か変わるかもしれない」と高い熱量で取り組んだという『エルピス-希望、あるいは災い-』の制作経験が、大事な瞬間だったと教えていただきました。

 

テレビドラマにおいて新しいことをする場合、自分はもちろん、キャスト・スタッフを背負ってチャレンジしなければいけない、ドラマプロデューサーという職業。大きな責任を伴うからこそ、様々な切り口ややり方を常に考えており、いつでも取り出せるように刀を研いでいるようなインプットだなと感じました。

話は制作費やジャンルといった業界の裏側にも及びました。NHKと民放の構造的な違いや、日曜劇場の特別なポジショニングなど、テレビ局や放送枠によっても大きく変わってくるドラマ制作。

 

ジャンルだとラブストーリーの企画書が作れないと佐野さんは言います。王道ジャンルでありながら、新しい構造や関係性を作ることが難しいとのことで、確かに全く新しいラブストーリーの企画は?と聞かれても、思考のスタートにも至れないくらい、想像がつきません。

 

社会、映画、子育て、SF、制作費、愛のかたちまで、多様な話題に広がった今回の対談。気づけば一つの質問メールからエンディングまでノンストップでお送りしました。

 

次回以降もリスナーさんからの佐野さんへの質問メッセージを紹介しつつ、展開していきます。

 

ぜひ番組と、このホームページでお楽しみください。