#54 愛があるからこそ言いたい、演劇業界が抱える問題

Update:
2025.07.21

蓮見翔 ダウ90000主宰・脚本家

Update:
2025.07.21

コント・演劇ユニット「ダウ90000」主宰、脚本家、演出家。1997年4月8日、東京都東久留米市生まれ。東京都立井草高等学校を経て、日本大学芸術学部映画学科卒業。大学在学中の2017年に前身グループ「はりねずみのパジャマ」を結成。2020年9月、現在の8人組「ダウ90000」を旗揚げ、すべての脚本・演出を手がける。第66・68回の岸田國士戯曲賞最終候補選出など演劇界でも高い評価を獲得。2023年にはForbes JAPAN 30 UNDER 30のENTERTAINMENT&SPORTS部門を受賞する他、2024年公開「AT THE BENCH」(奥山由之監督)では第2編で脚本を担当し注目を集める。2025年第7回演劇公演「ロマンス」では初めて全国4都市(東京・大阪・金沢・福岡)を回るツアーを開催。

収録レポート

イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。

 

今回は番組7人目のゲストとして、コント・演劇ユニット「ダウ90000」主宰で、脚本家・演出家の蓮見翔さんをお招きして録音された、#54収録の様子をご紹介します。

8人組コント・演劇ユニット、ダウ90000において全ての脚本を担当し、お笑い界はもちろん第66・68回の岸田國士戯曲賞最終候補選出など演劇界でも高い評価を受けている蓮見さん。また、2023年8月には、『Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023』も受賞されています。

 

林さんとの出会いは2025年1月に開催された映画『ルックバック』のトークセッション。そこで連絡先を交換した後、ヒップホップトリオ『Dos Monos』のラッパーであり、Podcast番組『奇奇怪怪』のパーソナリティとしても有名な、TaiTan(タイタン)さんと3人で食事に行ったそう。

 

蓮見さんは林さんの仕事量の多さと、それをアピールしてこない不気味さに「やばい人だ」と感じたらしく、そこからもっと喋りたくなったとのこと。二軒目まで行くほど盛り上がり、確かに仲良くなったはずの二人。だったのですが…かなりお酒が入っていたようで距離感がリセットされていると、番組プロデューサーの石井さんから鋭くツッコミを入れられていました。

 

今回の対談では改めてシラフで、林さんが蓮見さんのキャリアを深堀りしていきます。

現在お笑い芸人・俳優・脚本家・演出家と4つの顔を持つ蓮見さんですが、もともとはさまぁ~ずさんをきっかけにお笑いにハマり、そこからラーメンズさん、東京03さんのDVDをひたすら見る日々を経て、いつしか作る方にハマっていきました。

 

吉祥寺出身の林さんと花小金井出身の蓮見さん、地元が近所ということで、近い文化圏で生きてきたのではという話題になります。TSUTAYAやディスク・ユニオンなど、平成の景色で盛り上がる二人。また、お笑いコンビ・かもめんたるの岩崎う大さんもその付近が出身とのことで、もしかしたらコントや演劇のカルチャーを醸成する空気感のある地域なのかもしれません。

 

林さんも『青の祓魔師』など2.5次元舞台の経験はあるものの、蓮見さんとしては完全に別ジャンルとのこと。「2.5次元俳優」というワードも生まれるほど、独自の進化を遂げており、ファンの熱量も高いジャンルとなっています。一方で、林さんの「小劇場って相当食えないんですかね?」という質問に対し、「あまりにも食えないです。笑っちゃいますよ」と即答する蓮見さん。

 

集客などの面で課題を抱えているにも関わらず、壮大なことをやりたい、迎合したくない、むしろ食えているのはダサい。そういった過度な清貧思想が美徳とされるケースもあると言います。

演劇業界の搾取的な構造やハラスメントについて、蓮見さんとしては良くなって欲しい!と一人で声を上げ続けていますが、メディアで発信するとネット上では演劇ファンから苦言を呈されることも。愛ゆえに、改善したいがゆえの発言であるのは前提としてありながら、そこが伝わらないことについては心が折れそうになる時もある、と業界を背負って表に立つ立場となりつつある、蓮見さんの苦悩が見えた一幕となりました。

 

また、演劇とコントの線引きや、評価基準の曖昧さについて、思うところもある様子。お笑い界からは芸人がお芝居やらないで、と言われ、演劇界からはテーマが無いという評価を受ける。「ただ面白かっただけでいいじゃん」と言う蓮見さんからは、脚本家として、そして芸人としてのプライドを感じます。

 

現在、第7回演劇公演『ロマンス』にて、初となる4都市公演を開催しているダウ90000。執筆スケジュールが厳しかったこともあり、蓮見さん的には初めて自分が普段思っていることだとバレてしまう要素が入ったそうですが、その結果としてテーマがあったという感想を多く貰ったとのこと。「テーマ」というグレーな定義と概念の中で作品づくりに挑んでいく難しさは、私たちの想像を遥かに超えていることでしょう。

幅広いコントという表現において、あえて等身大を表現しているというダウ90000。年齢を重ねることによって演じられる役が増えていくことも魅力、と思っていたものの、20代が長いことに最近気付いたという蓮見さん。確かに25歳と28歳で、演じられるキャラクターに違いは生まれなさそうです。

 

蓮見さんの脚本づくりと週刊連載のやり方について話していったタイミングで、二人の対談初回はお時間に。次回は更にネタ作りの方法やお笑いのやり方について深堀りしつつ、ダウ90000の現在の活動についてもお聞きしていきます。林さんの働き方に蓮見さんが怖がる展開に…!?

 

ぜひ番組とこのホームページでお楽しみください。