#69 世界に届く、日本のエンタメの作り方

Update:
2025.11.03

佐久間宣行 テレビプロデューサー

Update:
2025.11.03

1975年生まれ。福島県いわき市出身。 テレビ東京のプロデューサーとして「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「ピラメキーノ」「ウレロ☆シリーズ」「キングちゃん」などを制作。2019年4月からラジオ「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」を担当。 2021年3月末にテレビ東京を退社しフリーに。Netflix「トークサバイバー」「罵倒村」「デスキスゲーム」 「LIGHTHOUSE」DMMTV「インシデンツ」YouTube「NobrockTV」「BSノブロック」は総登録者300万人。 著作に「佐久間宣行のずるい仕事術」「ごきげんになる技術」など。レギュラー番組「勝手にテレ東批評」

収録レポート

イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。

 

今回は番組8人目のゲストとして、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんをお招きして録音された、#69収録の様子をご紹介します。

今回も、まずはリスナーさんからの『人の才能を伸ばすために意識していることは?』という質問から。佐久間さんは、その人のコンプレックスや苦手だと思っていることを、保険をかけつつ面白いんじゃないかと扉を開けると語ります。その人が、武器だと感じていないことを見つけてあげたいという思いがあるとか。

佐久間さんが出演・制作するYouTubeチャンネル『NOBROCK TV』の100ボケ100ツッコミなどは、コンビ間の秘められた面白さが出せるのではないかと思って始めたとのこと。芸人の新たな一面を引き出す、ある種育成の場としてYouTubeを発信していたそうです。

ただ、最近のYouTubeは仲の良い人たちの映像が見たい、という需要からグループやファミリー感を重視する「箱推し文化」に移行しており、純粋なお笑いの実験の場としては変化の時期を迎えていると佐久間さん。実験的な企画はメンバーシップだけで行うアイデアなど、プラットフォームとコンテンツ配信の答えは日々変わり続けているのです。

今年50歳を迎えられる佐久間さん。ここからは出会いと面白さの発掘をしていきたいと語ります。

用意されたプレゼン資料ではなく、周囲の評判や実際に見た芝居、自主制作的なラジオなど、生の情報からポテンシャルを見出すのが佐久間さん流。特に「マネージャーが惚れ込んでいるタレントさんは、何かある」という言葉が印象的でした。

一方で、漫画家の育成に関しては、芸人とはまったく異なる時間軸が必要になってきます。良さが見えてくるまで5年ほどかかることもザラで、1年2年では全然分からないと林さん。出会った時は高校生でも、気づいたら大学生になっているなんてことも往々にしてあるそうです。

週刊連載の適性については、林さんも分からないと前置きしつつ、やはり重要だと感じているそうなのが、心身の健康。ネームが早く、作画が早いというのは最低条件であり、そこに精神と肉体の健康さが伴って初めて達成されるのが週刊連載というフォーマットなのです。

『SPY×FAMILY』で世界的ヒットを記録した遠藤達哉先生の場合、前の連載は7年前。間に読み切りを3本出していますが、その間は特に何も無い状態で打ち合わせを重ねている状態であり、改めて私たちが普段読んでいる漫画がどれほど氷山の一角であるか実感するエピソードとなりました。

番組中盤では、佐久間さんによるプロデュース論の話題に。特徴的だと感じたのは、コンビ芸人の「じゃない方」にも光を当て、両方を輝かせようとする視点です。一人だけが輝く企画だと切り離されて呼ばれるケースが増えてしまうこともあり、できるだけコンビ両方で売れて欲しいと思っているそう。

かつては澤部さんだけが目立っていたハライチに、岩井さんの面白さを引き出す企画を仕掛け、結果的にコンビ全体の魅力を高めたエピソードは、その哲学を象徴していました。タレントのキャリアを長期的な視点で見つめる、もはや親とも言える愛情深い姿勢を持つ佐久間さんだからこそ出来た、フェーズに合わせたプロデュースだったのです。

昨今は日本に留まらず、世界で活躍される芸人さんも登場してきています。しかしながら、佐久間さんは近年の日本のエンタメが、視聴者を飽きさせないために複雑化しすぎている、いわば「ドーピングしすぎた」状態にあると分析します。

世界的大ヒットとなった韓国の『イカゲーム』が、日本では既に何度も描かれてきた「デスゲーム」のシンプルな構造だったという話を例にあげます。日本国内では既に食べ飽きたフォーマットでも、世界的な視点で見ると新しい。世界で勝負するためには、一度その複雑さをリセットし、誰もが理解できる「シーズン1」のようなシンプルなフォーマットで提示する必要があるのかもしれません。


テレビ局各局、漫才やコントなどの賞レースを開催し、いわゆる「ネタ」の質では世界の中でも最高峰にまで到達しているのかもしれません。一方で、それが世界にウケるのか、海外の人にウケるのかは別の話。

海外のフォーマットを日本のお笑いに持ってくる手法についても語られます。仕掛けや番組の構成だけでなく、出演者や放送時間などローカライズするにあたって考えることは多くありそうです。

次回もリスナーの皆さんから頂いたメールも紹介しつつ、クリエイターとお金にまつわる話から、これからの働き方の話、業界の裏話など聴き逃せない話題が盛り沢山です。

 

ぜひ番組とこのホームページでお楽しみください。