#20 脚本家の視点で語る、日曜劇場『空飛ぶ広報室』と『アンナチュラル』の裏側

Update:
2024.11.18

野木亜紀子 脚本家

Update:
2024.11.18

野木亜紀子、脚本家。主な脚色作品にドラマ「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」、映画「アイアムアヒーロー」「罪の声」「カラオケ行こ!」など。オリジナル作品にドラマ「アンナチュラル」「獣になれない私たち」「コタキ兄弟と四苦八苦」「MIU404」「フェンス」など。2024年、「アンナチュラル」「MIU404」の続編にあたる映画「ラストマイル」公開、日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」放送。

収録レポート

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引き続きゲストとして、脚本家 野木亜紀子さんをお招きした、#20収録の様子を紹介します。

前回は脚本家としてのキャリアをスタートさせるまで伺っていきました。今回はその続きからスタート。

 

複数脚本のドラマにピンチヒッター的に呼ばれ、あと10日で45分のドラマ1話をゼロから書くような、ひりつく状況の中、なんとかやりきった野木さん。林さんいわく「書けるって気づかれたんですよ」とのこと。その縁から次の作品に繋がったりもしているそうで、キャリアの初期のチャンスを掴むための努力は、惜しむべきではないと痛感するエピソードでした。

 

その後、TBS日曜劇場『空飛ぶ広報室』の脚本を担当することに。当時1人で民放連続ドラマの脚本を全話書いたことが無かった野木さんでしたが、いきなりゴールデンタイムの日曜劇場へ抜擢されます。

 

最終回に登場する松島基地のある宮城県までバイクで向かい、地元の飲み屋で話を聞くなど、持ち前の取材力を遺憾なく発揮。取材した経験や聞いた内容を全部咀嚼して、脚本を書いていく。取材した内容をただ脚本に反映させるのではなく、咀嚼して物語全体へ向き合う意識が、野木さんの作品の深みやリアリティに繋がっているのかもしれません。

ここから連続ドラマ、『空飛ぶ広報室』『掟上今日子の備忘録』『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』と原作ものを担当し、どれも大好評を博した野木さん。ついに初めて、企画からオリジナルドラマを作ることになります。それが『アンナチュラル』でした。

 

『重版出来!』でメイン監督を務められていた土井裕泰さんが、打ち上げの際「TBSは野木さんにオリジナルを書かせるべきだ!」と推してくれたこともキッカケの一つだったそう。

 

そのタイミングで、女性主人公の監察医ものというテーマで、原作湊かなえさん・脚本奥寺佐渡子さんのテレビドラマ『Nのために』で演出を担当していた塚原あゆ子さんと、プロデューサーの新井順子さんと、チームで一緒にやらないかとの提案を受けます。『Nのために』が大好きだったという野木さんは快諾。こうして『アンナチュラル』の制作へと向かっていったのでした。

脚本というものの性質上、最終のアウトプットは現場の裁量に任せられる部分が大きくなってきます。どれだけ素晴らしい脚本があっても、演出次第でマイナス20点になってしまう場合もあれば、プラス20点になる場合も。特に映画学校で監督を志していた野木さんからすると、演出の細かい部分にも気付いてしまうのです。

 

常に闘いだったと笑う野木さんですが、その苦労は私たちには到底計り知れないもの。決して闘いたくはないけど、作りたいもののために闘い抜いて、やっと作品が世に出ていく。その連続の中で、信頼できる人との関係性を少しずつ構築してきたからこそ、『アンナチュラル』『MIU404』『ラストマイル』と続いていくチームが強固なものになっていったのでしょう。「結局、人です」という強い言葉が響きました。

 

一見華やかに見える、テレビドラマや映画の世界。実は裏で暗躍しているプロデューサーや、美味しい話かのように振る舞うビッグマウスな関係者も居るそう。だからこそ、仕事した分評価されて然るべきだし報われて欲しいと野木さん。

 

聞いていて節々から感じ取れると思いますが、林さんは収録前に紙媒体からWeb、創作物まで膨大な資料を読み込んでから臨んでいます。そのお手伝いの資料集めをした際に、野木さんの過去のインタビューなど読ませて頂いたのですが、必ず関わった方々の名前を出されていて、リスペクトをとても感じました。

 

なかなかまとまった制作スケジュールを取りづらい、現在の日本の連続ドラマ。意見の食い違いや見解の不一致によって、最高のアウトプットにならない場面もあるのかもしれません。だからこそ、野木さんのように綿密な取材と信頼できる仲間によって生み出される作品の数々は、多くの人の心を震わせてきたのでしょう。

 

次回は映画『ラストマイル』の話をたっぷり聞きながら、現代における脚本家という職業への考え方など、興味深すぎるお話を伺っていきます。

 

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