#21 脚本家が語る映画『ラストマイル』誕生秘話
- Update:
- 2024.11.25
野木亜紀子 脚本家
- Update:
- 2024.11.25
野木亜紀子、脚本家。主な脚色作品にドラマ「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」、映画「アイアムアヒーロー」「罪の声」「カラオケ行こ!」など。オリジナル作品にドラマ「アンナチュラル」「獣になれない私たち」「コタキ兄弟と四苦八苦」「MIU404」「フェンス」など。2024年、「アンナチュラル」「MIU404」の続編にあたる映画「ラストマイル」公開、日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」放送。
イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。
引き続きゲストとして、脚本家 野木亜紀子さんをお招きした、#21収録の様子を紹介します。
野木さんが初めて企画から作ったドラマである『アンナチュラル』。そのタイトルについての裏話から#21はスタート。
ひと目見て分かりやすい説明のようなタイトルや、いわゆる「〜〜(にょろ)」が付いたサブタイトル有りのタイトルなどを求める人も居るなかで、『アンナチュラル』を通すために、新井順子プロデューサーは腹案として『解剖、ときどき恋』という、あえてあり得ないと思われる候補を準備。
作品を良くするため、闘ってでもアイデアを通しにいく。「ふざけてるのか!」とも言われたそうですが、この姿勢が前回#20でも話題になった「結局人です」という言葉に繋がっているのだと感じたエピソードでした。
続く『MIU404』。初見だとなかなか読みづらいタイトルで、野木さんも通るか心配していたそうですが、こちらはあっさりと通過。大ヒットの影響は大きく、現場でのお任せ度合いも上がり、企画も通りやすくなっていきます。
ここでまだ観ていない方のために補足を少し!
『アンナチュラル』『MIU404』『ラストマイル』は同一世界のお話であり、『ラストマイル』には『アンナチュラル』『MIU404』の登場人物も出演しています。マーベルの作品に別作品の登場人物が出演しているイメージ。“シェアード・ユニバース作品”なんて呼ばれ方もしています。
『ラストマイル』は、流通業界最大のイベントのひとつである「ブラックフライデー」前夜、世界規模のショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。連続爆破事件に発展する中、物流センター長に就いた舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と事態を収束させようと奔走する作品。
実は企画立ち上げの際には、シェアード・ユニバースにすることは考えていなかったそう。『MIU404』にて機動捜査隊(通称:機捜)を扱うことが決まったタイミングで、地元警察役として新しいキャラクターを作るより『アンナチュラル』から西武蔵野署のキャラクターを連れてくれば良いのでは?という経緯から、2つの作品の世界、そして『ラストマイル』へ繋がっていったのです。
本編内では『ラストマイル』から、あのシーンにまつわる裏話も頂きました。一部ネタバレになる部分もありますので、これから観る方はご注意を!
『ラストマイル』の企画の段階で、塚原あゆ子監督と話していたところ、荷物が爆発する話と唐突な提案が。野木さんいわく「あの人爆発とか血とか大好きなんですよ」とのことでしたが、時代はコロナ禍。ちょうどオンラインショッピングが一般化し、配送や物流に歪みが生まれてきたタイミングでした。
塚原さんのお話もキッカケの一つとなり、ECサイトで働いていた方から宅配のドライバー、その他物流や配送に関わる多くの人に取材を重ねて制作されていった本作品。厳密に言えば物流問題を直接社会的に取り扱った話にはなりませんでしたが、働くとは何かを考えさせられる作品となり、興行収入は本レポート更新時で57億円を突破。幅広く多くの人に刺さる作品となりました。
映画とドラマの違いから、話は脚本家とプロデューサーの役割と業界の現状について展開していきます。漫画界においては「読み切り」というシステムが上手く新人発掘として機能しており、また読み切り漫画を楽しむカルチャーも読者に根付いている印象。
一方でテレビドラマや映画では、初めからある程度数字が見える原作モノや名のある脚本家を採用した作品などが多く見られるようになってきています。そうなってくると、新人が活躍する場所が限られてしまうという問題が。
野木さんは「脚本家が居ないというより、プロデューサーが居ない」との見解でした。新人脚本家にトライアンドエラーで経験を積ませて育てていけるような、懐の深いプロデューサーがテレビ局になかなか居ない問題があるのかもしれません。
日本の社会福祉システムにまで話が及んだところで、初回の収録はここまで。一ヶ月ほど収録期間が空いて始まる、次回以降の展開も必聴・必見です!
ぜひ番組とこのホームページでお楽しみください。