#24 世界情勢が物語に及ぼす影響とは?
- Update:
- 2024.12.16
野木亜紀子 脚本家
- Update:
- 2024.12.16
野木亜紀子、脚本家。主な脚色作品にドラマ「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」、映画「アイアムアヒーロー」「罪の声」「カラオケ行こ!」など。オリジナル作品にドラマ「アンナチュラル」「獣になれない私たち」「コタキ兄弟と四苦八苦」「MIU404」「フェンス」など。2024年、「アンナチュラル」「MIU404」の続編にあたる映画「ラストマイル」公開、日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」放送。
イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。
引き続きゲストとして、脚本家 野木亜紀子さんをお招きした、#24収録の様子を紹介します。
「野木さん、憧れの俳優さんは?」という質問を頂きました。
お仕事したい人で言うと、既にしてしまっている人も多い野木さん。連ドラの性質上、先にキャストが決まることも多いらしく、当て書きすることも多いとか。例えば『ラストマイル』では、何が何でも満島ひかりさんにやってもらいたかったらしく、断られたらどうするんだ、という状態で脚本を書いていたそうです。
なかなか難しい質問でしたが、桃井かおりさん、大竹しのぶさんというお二人の名前を挙げていただきました。そういった大御所の方に依頼するには、意味のある役である必要があると野木さん。いつか野木さん作品にお二人が登場する日を楽しみにしましょう!
野木さんにはオリジナルはもちろん、まだまだ原作モノの依頼が舞い込み続けています。番組内で林さんも仰られていましたが、原作者さんや漫画家さんが無邪気に野木さんを指名し、間に居る人が苦しむケースは多発していそうです。
人はいつ死ぬか分からないから、自分がやりたい仕事を最初にやっていきたい。そんな展開から、話題は収録日直前のアメリカ大統領選挙のお話に。
共和党のドナルド・トランプ前大統領が、民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り勝利。4年ぶりに政権を奪還しました。現状トランプ政権は2025年1月20日からの政権発足に向けて準備している段階ですが、既にメキシコ国境の壁復活や高額な関税、ロシアのウクライナ侵攻終結の約束など、大きく世界情勢に影響を与えることは間違いありません。
そういった状況はクリエイティブの世界にも波及していきます。数年前から準備してきた企画も、世界情勢を考えると難しくなってしまうケースもあり、逆に半年後どのような世界になっているか全く読めないという点も創作を難しくさせます。
例えば「第三次世界大戦後の荒廃した世界」。SF作品などで頻繁に採用されてきた設定で、映画や小説など数え切れない作品があります。これを今やるとすると、SFの設定というよりは、現実の延長線上になってしまい企画当初の意図から外れてしまう可能性があります。
昨今の世界情勢の緊迫感とスピード感は、創作にも大きく影響を与えてしまっているのです。事実、この収録から本レポート更新までの間でも、長きにわたりシリアで独裁政権を築いてきたアサド政権が崩壊。
尾田栄一郎先生が住んでるから、日本にミサイル飛ばしたら止めておこう。そんなエンタメが平和に繋がる道を夢想しているという林さん。なにかのトリガーで一気に傾いてしまいそうな世界情勢だからこそ、エンタメがクリエイティブが少しでも抑止力になることを願うばかりです。
現在放送中の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第四話では長崎原爆の話が語られました。終戦から79年。戦争を経験した方々の人数は減り、10代などの若い世代では家族で語られることもなく、完全に教科書の中の出来事になりつつあります。
「戦争」が身近に近づいてきてしまっている感覚。絶対に避けるべきものであるという共通認識が、世界で当たり前になる日は来るのでしょうか。
林さんが語られていた、図書館に入っていた漫画が手塚治虫先生の作品と『はだしのゲン』しか無かったというお話は共感できる人も多かったのではないでしょうか。僕の通っていた学校でも漫画は『火の鳥』と『はだしのゲン』の2択しか無く、無限に二作品をリピートしていた記憶があります。
クリエイティブや創作の力で、「戦争」というものに触れ理解しようとしてくれる人が現れる可能性もあると林さん。確かにそういったベースの知識や認識を漫画で培うことができたら、世界はもう少し良いものになるのかもしれません。
憧れの俳優さんから、昨今の世界情勢にまで話が及んだ第24回はここでお時間に。次回は遂に野木さん最終回! 漫画とドラマの作り方から、2人でのコラボレーションの可能性を探っていきます。
ぜひ番組とこのホームページでお楽しみください。