#51 世界で評価される日本の漫画・アニメの強みと林士平、まさかの映画監督構想?

Update:
2025.06.30

山田兼司 映画・ドラマプロデューサー

Update:
2025.06.30

Tyken Inc. CEO 映画・ドラマプロデューサー。慶應義塾大学法学部卒。ドラマ「BORDER」シリーズ、「dele」などを手掛け、東京ドラマアワード優秀賞を2度、ギャラクシー賞を3度受賞。また、仏カンヌでは「dele」でグランプリを受賞。映画「怪物」でカンヌ国際映画祭脚本賞、クィアパルム賞の2冠。「ゴジラ-1.0」では北米の邦画興行収入歴代1位を記録し、史上初のアカデミー賞視覚効果賞を受賞。同年、個人として「怪物」「ゴジラ-1.0」で2つのエランドール賞と藤本賞を受賞。北米では2023年を代表する「アジアゲームチェンジャーアワード」をグラミー賞受賞アーティストのアンダーソン・パークらと共に受賞した。2024年よりPGA(Producers Guild of America)の正式会員に選出。最新の企画・プロデュース作は「ファーストキス 1ST KISS」。

収録レポート

イナズマフラッシュの収録レポートをお届けする本ページ。

今回は番組6人目のゲストとして、映画・ドラマプロデューサーの山田兼司さんをお招きして録音された、#51収録の様子をご紹介します。

今回も冒頭はリスナーの皆さんから頂いた質問からスタート。山田さんが好きな漫画や最近読んだ漫画について聞いていきます。

お忙しいこともありなかなか読めていないそうですが、前回にもあったように漫画のコンテンツとしてのパワーをチェックするために、話題になっている連載にはざっと目を通しているそうです。一方で映画やシリーズドラマは移動中やご飯を食べながらも、必ずどちらかは見ている状態とのこと。

また、PGA(Producers Guild of America)全米製作者組合の正式会員に選出されている山田さんは、投票権を持っているため北米の話題になっている映画には一通り目を通しています。日本で暮らし、日本人のクリエイターと日々仕事に取り組む一方で、世界のメインストリームである北米や欧州の情報もチェックすることで、世界の感覚を養っているという山田さん。

カンヌ国際映画祭で得たヒントのお話にもあったように、いま受け入れられるのはドメスティックで、クリエイターの個人的な作品ですから、当然どの作品も世界中の人に見てもらおう!というスタートではありません。しかしながら、世界の流行や潮流を完全に無視してしまうのも、コンテンツの価値を最大化しようと考えた際にはNG。

やるべきことは日本と自分を深堀りすることではあるものの、世界で評価されているコンテンツにしっかりと向き合いなんとなくでも、その感覚を掴んでおくことは今後必須のスキルになってくるかもしれません。

一方で世界の潮流が掴めてしまうと、日本への視線の残酷さに気づいてしまうという側面も。日本への印象を聞いてみると、「昔はすごい映画があった」「漫画とアニメがすごい」というものばかりで、なかなか最新の日本映画が話題にのぼることは少ないという現状があります。

世界で人気となった日本のアニメや漫画といったカルチャー。なぜ海外でも人気を博しているのか、正式に理解できている人は居ないんじゃないかと林さん。例えば『NARUTO』や『鬼滅の刃』であれば、日本らしさが一つ作品の軸ではありますが、『ワンピース』など国籍や時代を飛び越えたオリジナルな世界観の作品も爆発的な人気を得ています。

異国ではなかなか見られないコンテンツの特徴としてあがったのが、「週刊連載」という更新の手法。必ず毎週数十ページに渡って物語が進んでいく、というパッケージは他に類を見ない形式です。多くの作品がものすごいスピードで物語を進めながら、取捨選択が繰り返された結果、日本の漫画というコンテンツはある意味で前人未到の領域に足を踏み入れているのです。

ローコストでスタートできるという、イナズマフラッシュでも何度も語られてきた漫画の強み。映画の場合だと漫画と比べてコストはどうしてもかかってしまいますが、短編映画というパッケージがあります。なかなか見る機会のないパッケージでしたが、配信やスマートフォンの普及により少しずつ一般の人も日常的に観ることのできるコンテンツとなってきています。

すると、山田さんから「短編映画、1本作ってみてくださいよ」とお誘いが。林さんのような全く違う畑でプロとして何か成し遂げている人が、ルーキーとして映画に向き合う時に既存の概念にとらわれない新しいものが生まれる可能性が高いと言います。

誰でも監督はやれて映画は作れる、ということを提唱していきたいと語る山田さんの言葉に乗せられて(?)、気づけば林さんが企画・プロデュース・監督・脚本を担う短編映画を作ろうという展開になっていったところでお時間に。

次回は山田さんとの対談最終回。今回のお話の流れから、実際に山田さんと林さんで短編映画の打ち合わせをしていきます。林さんの個人的で、オリジナルな物語で、強いコンセプトのあるアイデアは生まれるのか。かなり重厚で最終回にふさわしい対談となっています。

ぜひ番組とこのホームページでお楽しみください。